介護は誰にとっても他人事ではありません。親の介護が現実味を帯びる世代はもちろん、将来の自分の生活に不安を抱く若い世代にとっても、知っておくべきテーマです。
そこでまず理解しておきたいのが「公的な介護保険制度」。これは介護が必要になったときに備える国の制度で、基本的には誰でも加入しています。しかし、その保障内容は万能とはいえません。
本記事では、介護保険の基本的な仕組みと、民間の介護保険との違い、そして「自分にとって本当に必要かどうか」の判断ポイントをわかりやすく解説します。
介護保険とは?仕組みと対象者を解説
介護保険制度は、2000年にスタートした国の公的保険制度です。超高齢社会を見据え、高齢者の自立支援と家族の介護負担軽減を目的に創設されました。
介護保険の対象者は次の2つに分かれます。
- 第1号被保険者:65歳以上のすべての人
- 第2号被保険者:40歳〜64歳で、特定の16疾病に該当する人
要介護状態になった場合、住んでいる自治体に申請して「要介護認定」を受けることで、制度を利用できるようになります。
介護保険で受けられる主なサービス
在宅サービス
多くの方が利用するのが、訪問や通所を中心とした「在宅介護サービス」です。たとえば、以下のような内容があります。
- ホームヘルパーによる生活支援
- デイサービスセンターへの通所
- 短期間の施設利用(ショートステイ)
これらを組み合わせることで、自宅での生活を維持しながら介護を受けられます。
施設サービス
要介護度が高く、自宅での生活が難しい場合は、施設入所も選択肢に入ります。代表的なのは以下の3つです。
- 特別養護老人ホーム(特養)
- 介護老人保健施設(老健)
- 介護療養型医療施設
入所には条件があり、すぐに利用できるとは限らない点に注意が必要です。
自己負担割合と限度額
介護保険サービスの利用には原則として1割〜3割の自己負担が必要です。所得によって負担割合が異なります。
また、支給限度額は「要介護度」に応じて設定されており、月額約5万〜36万円程度までサービスを受けられます。限度額を超えた分は全額自己負担となります。
民間の介護保険との違いとは?
公的介護保険が「現物給付(サービス提供)」であるのに対し、民間の介護保険は「現金給付」が基本。つまり、要介護状態になった場合に保険金が支払われ、それを自由に使えるのが民間保険の特徴です。
主な給付形態は以下の2種類:
- 一時金タイプ:まとまったお金が一度に支払われる
- 年金タイプ:毎月一定額が支払われる
保険金は、介護サービス以外にも住宅改修費や生活費、家族の交通費など自由に使えます。公的介護保険ではカバーできない費用を補完する役割を持ちます。
介護費用はどのくらいかかる?不足を補うには
実際の介護にはどの程度の費用がかかるのか、正直想像がつかないですよね。
厚生労働省の調査によると、介護期間の平均は約5年、総額は約500万円とされています。月にかかる費用は、自宅介護で約7〜15万円、施設入所なら20万円を超えるケースも。
公的介護保険で一定のサービスは受けられますが、住宅改修や日用品、家族の負担など、制度ではカバーされない出費も多く発生します。
その不足分をどう補うかが重要です。選択肢としては、以下のようなものがあります。
- 貯蓄で備える
- 民間の介護保険でカバーする
- 家族間で費用を分担する
民間介護保険に加入すべき人・不要な人
加入を検討したほうがよいケース
- 一人暮らしや子どもがいない人
- 家族に頼れない可能性がある人
- 老後の生活費に余裕がない人
これらに該当する場合、公的保険だけでは不安が残るため、民間保険を活用する価値があります。
加入しなくても問題ないケース
- 十分な貯蓄や資産がある人
- すでにほかの保障制度(共済など)に加入している人
- 家族の支援が十分に見込める人
民間保険は毎月の保険料がかかるため、「本当に必要か?」をよく見極めたうえでの加入が重要です。
介護保険に限らず、民間保険は「入っていれば安心」ではなく、「入る理由が明確か」が大切。
特に、がん保険や医療保険など、他の民間保険とのバランスを見ながら判断することが重要です。
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まとめ|まずは制度を正しく知ることが備えの第一歩
介護に直面したとき、「知らなかった」では済まされないのが介護保険制度。まずは公的介護保険の保障範囲を正しく理解し、そのうえで自分や家族に必要な備えを考えることが大切です。
民間保険はあくまで補完的な手段なので、すべての人に必要なわけではありません。将来の不安に対して、制度と自助のバランスを取りながら、今から備えを進めていきましょう。
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