血統を系統別に紹介するコーナー。
今回は、大系統ノーザンダンサー系と、そこから派生する小系統について紹介します。
大系統ノーザンダンサー系
ノーザンダンサーは1960年代に産まれ一流の競走成績を収めましたが、それ以上に名を知らしめたのは種牡馬となってから。
「ノーザンダンサーの血の一滴は、ワンカラットのダイヤより価値がある」とまで言われ、20世紀最高の呼び声もある名種牡馬です。
ノーザンダンサーはカナダで生まれましたが、その産駒は世界中で活躍。活躍する国によって様々なタイプの種牡馬がおり、主に欧州型・米国型に分けて考えます。
分類 | 小系統 |
---|---|
欧州型 | ・サドラーズウェルズ系 ・リファール系 ・ニジンスキー系 ・ノーザンダンサー系 ・ダンチヒ系 |
米国型 | ・ヴァイスリージェント系 ・ストームバード系 ・ヌレイエフ系 ・ダンチヒ系 |
欧州型と米国型によって活躍する場は違います。この中でもダンチヒ系は特に優れており、世界中で繁栄していますね。
では、続いてそれぞれの特徴について解説していきます。
欧州型ノーザンダンサー系
欧州型ノーザンダンサー系の特徴は、スピードよりもスタミナに秀でること。
欧州競馬は日本より起伏の激しいコースでレースが行われるため、それを走り切るためのスタミナとパワーを強化するような配合・育成がなされます。
これまで何度も日本トップレベルの馬が、凱旋門賞の直線で伸びずに失速するシーンを見てきたことでしょう。それが欧州のタフさなのです。
しかし、そのスタミナは日本では逆に仇となり、芝ではスピード不足となって大舞台で活躍する馬がほとんど現れません。
父が欧州型ノーザンダンサー系でG1を勝つ馬は、ほんの一握りですね。
稀に何度もG1を勝つような名馬が誕生しますが、現役時代の活躍とは裏腹に、種牡馬としては大成しなくなるのは、血統の影響が大きいのでしょう。
では、欧州型ノーザンダンサー系に分類される系統を紹介していきます。
サドラーズウェルズ系
サドラーズウェルズは欧州を代表する大種牡馬で、スタミナ血統の代表格です。日本ではメイショウサムソンやローエングリンが活躍しました。
2016年には欧州最強馬と呼ばれたフランケルの産駒がデビュー。いきなりソウルスターリングがG1を勝利しています。
2018年にはモズアスコットが、その後もグレナディアガーズといった活躍馬も輩出。G1でも通用する馬がいますが、活躍の場はマイル前後のほうが多いですね。
ソウルスターリングのように、主流条件なら牝馬のほうが軽さが出て向いています。
フランケルは母父がダンチヒ系のデインヒルで、その影響を強く受けているため日本の芝でも通用する産駒が出やすいです。
長距離重賞では母系にサドラーを持つ馬が穴をあけることも多く、馬券的な狙い目は「底力」を求められる条件でしょう。
サドラーズウェルズ系の種牡馬
- アサクサデンエン
- アントレプレナー
- ヴィットリオドーロ
- オペラハウス
- カーネギー
- ケープブランコ
- サフロンウォルデン
- シングンオペラ
- タリスマニック
- テイエムオペラオー
- ドリームウェル
- ネオアトラクション
- バンデ
- ハンティングホーク
- ホークビル
- ムーンバラッド
- メイショウサムソン
- ユーノテソーロ
- リッチーリッチー
- ローエングリン
- ロゴタイプ
- Australia
- Authorized
- Dawn Approach
- El Prado
- Frankel
- Galileo
- High Chaparral
- Hurricane Run
- Kitten’s Joy
- Magician
- Medaglia d’Oro
- Montjeu
- New Approach
- Singspiel
- Tavistock
- Teofilo
- Violence
※Medaglia d’Oroは米国型
リファール系
リファールはディープインパクトの母父でもあり、欧州型のなかでは比較的スピードがあるタイプです。
「春のリファール」という格言があるように、暖かくなる時期が得意な産駒も多いです。また、前走から距離を縮める距離短縮での激走も見込めます。
京都や東京のマイル重賞でたびたび好走することもありますが、リファール系の産駒は減少。キングヘイローは母父として存在感を示し、やはり短縮ローテでの激走に要注意ですね。
リファール系の種牡馬
リファール系の種牡馬は以下の馬が該当します。
- アサクサキングス
- キングヘイロー
- コマンダーインチーフ
- シルポート
- ダンシングブレーヴ
- バンドワゴン
- ホワイトマズル
- ラスカルスズカ
- ローレルゲレイロ
ニジンスキー系
ニジンスキー系は、今や父系としてはほとんど日本で活躍していません。
しかし、ニジンスキー自身は英国の三冠馬。種牡馬としても超一流だったので能力は高く、スタミナが豊富なので母系に入って良さが出ます。
直線が短く仕掛けが早くなるローカルの中長距離では、ニジンスキーの血を持つ馬がまとめて走ることも多く、血統派には注目されやすいですね。
Tサンデー系のスペシャルウィーク・ダンスインザダークは母系にニジンスキーの血を持っているため、同時好走しやすいことも有名です。
ニジンスキー系の種牡馬
- エイシンプレストン
- ゼンノエルシド
- テンビー
- バランスオブゲーム
- フサイチコンコルド
- マリエンバード
- ラムタラ
ノーザンダンサー系
欧州型に分類され、これまでの系統に属さない馬をまとめてノーザンダンサー系としています。いずれも鈍足血統で、スピード不足なタイプが多いです。
鈍足ゆえに軽い馬場の瞬発力勝負よりも、重い馬場でスタミナ比べになる方がパフォーマンスが上昇。最近ではタートルボウルの産駒が中山の芝やダートで穴をあけることが増えてきましたね。
ノーザンダンサー系の種牡馬
- アサティス
- ウイングアロー
- スーパーホーネット
- スマートボーイ
- タートルボウル
- ノーザンテースト
- ファルブラヴ
- メイショウドトウ
- メジロライアン
- ラストタイクーン
- ロドリゴデトリアーノ
- Azamour
- Marju
- Royal Applause
欧州型ダンチヒ系
欧州型のダンチヒ系はタフな馬場に強く、重馬場や暮れの中山などでまとめて好走することも。反面、パンパンの良馬場では切れ負けすることが多いです。
代表的な種牡馬はハービンジャーで、やはり坂のあるコースなどが得意です。
G1で活躍するには母系にサンデーサイレンスかキングカメハメハの血が欲しいところ。あまり早い時期から活躍するタイプではないので、クラシックでは狙いづらいですね。
サドラー系と同様、牝馬のほうが軽さがあってクラシックでも活躍することがあります。また、ダンチヒは「〇×血統」として好走・凡走を繰り返しやすいのも覚えておきたいですね。
欧州型ダンチヒ系の種牡馬
- グランデラ
- チーフベアハート
- デインヒル
- バチアー
- ハービンジャー
- ピルサドスキー
- ベーカバド
- ロックオブジブラルタル
- Cape Cross
- Dansili
- Danzero
- Declaration of War
- Dylan Thomas
- Fastnet Rock
- Invincible Spirit
- Kingman
- Oratorio
- Redoute’s Choice
- Sha The Stars
- Sinndar
- Tiger Hill
米国型ノーザンダンサー系
米国型の特徴はダート向きで完成度が早く、2歳戦から活躍する馬が多いこと。
短距離なら芝でも走れるタイプもいますが、瞬発力はないので高速馬場でなだれ込むのが得意。とくに1400m以下ならサンデー系よりも馬券的には美味しく、短縮ローテや内枠で狙うと効果的です。
では、米国型ノーザンダンサー系に分類される系統を紹介していきます。
ストームバード系
ストームバード系は短距離を中心に、芝・ダートともに活躍しています。
母系としてディープインパクトとの配合は相性が良く、ダービー馬のキズナやドバイで圧勝したリアルスティールなどの活躍馬を輩出しています。
ストームバード系の注目種牡馬はヘニーヒューズですね。
ダートではこれまでサウスヴィグラスやパイロなどが穴血統として有名でしたが、ヘニーヒューズも能力が高く、今後のダートで狙える機会は多いので要チェックです。
なお、ジャイアンツコーズウェイはストームバード系のなかでも欧州の芝で活躍した珍しいタイプで、欧州型寄りの特徴を持ちます。
ストームバード系の種牡馬
- アジアエクスプレス
- エイシンアポロン
- エーシンフォワード
- エスケンデレヤ
- カリズマティック
- ゴスホークケン
- サウンドボルケーノ
- サンライズバッカス
- シーキングザダイヤ
- ジャイアントレッカー
- スズカコーズウェイ
- スタチューオブリバティ
- タバスコキャット
- ディスクリートキャット
- ネロ
- フィガロ
- ヘニーヒューズ
- ヘネシー
- モーニン
- ヨハネスブルグ
- ワンダーアキュート
- Bluegrass Cat
- Forest Wildcat
- Forestry
- Giant’s Causeway
- Harlan’s Holiday
- High Yield
- Into Mischief
- No Nay Never
- Scat Daddy
- Shamardal
- Storm Bird
ヴァイスリージェント系
ヴァイスリージェント系も基本的にはダート短距離血統。ただ、中距離までこなすタイプも多く、芝のマイル重賞で活躍する産駒もいます。
日本ではクロフネが種牡馬としても活躍しています。
母系が芝血統だと芝馬に、ダート血統ならダート馬になりやすい特徴がありますね。
牝馬で名スプリンターを輩出していますが、牡馬では目立った活躍がない特徴もあり、フィリーサイアー(牝馬の活躍が目立つ種牡馬)としても知られています。
また、クロフネ産駒はトライアル(前哨戦)で好走し、本番でパフォーマンスを落とす傾向もあるため、前走で好走したからといってG1で本命にすると痛い目に遭う可能性も高いので注意しましょう。
ヴァイスリージェント系の種牡馬
- エイシンデピュティ
- クロフネ
- デヒア
- ノボジャック
- フサイチリシャール
- フレンチデピュティ
- モルフェデスペクタ
- Awesome Again
- Ghostzapper
- Spring At Last
- Touch Gold
ヌレイエフ系
ヌレイエフ系の種牡馬は少なく、ダートの短距離が主戦場です。
瞬発力よりも持続力に優れるため、母系にいると非根幹距離に強いタイプが出ます。エリザベス女王杯ではヌレイエフの血を持つ馬が何度も激走していました。
もはや父として見るのはファスリエフくらいでしょうか。ファスリエフはダートの短距離でコンスタントに活躍しています。
ヌレイエフ系の種牡馬
- ジェリ
- シベリアンホーク
- ストラヴィンスキー
- スピニングワールド
- パントレセレブル
- ファスリエフ
- ブラックホーク
- Gold Away
- Jimmy Choux
- Pivotal
- Siyouni
- Theatrical
米国型ダンチヒ系
米国型ダンチヒ系は主に短距離で活躍しますが、芝向きかダート向きか分かれることが多いですね。
ダートが苦手で凡走しても、パワーがあるタイプが多いので芝の重馬場なら滅法強いなんてこともあり、1200m戦では要注意な血統です。
欧州型ダンチヒ系にも言えることですが、ダンチヒ系は総じて反動が出やすいため、好走した後は凡走する〇×のリズムになりやすい。
これは父としてだけでなく、母父としてダンチヒの血を持つ馬にも見られる傾向なので、覚えておくと馬券でいい思いをできるかもしれません。
米国型ダンチヒ系の種牡馬
- アポロソニック
- エルハーブ
- コマンズ
- スニッツェル
- トビーズコーナー
- ハードスパン
- ポリッシュネイビー
- Bertolini
- Chief’s Crown
- Declaration of War
- Green Desert
- Hard Spun
- Orpen
- War Chant
注目種牡馬
サドラーズウェルズ系のフランケルは、現役時代に欧州最強場として君臨。日本でも産駒は人気を集めやすく、一定の能力は見せています。
しかし、トップレベルになると瞬発力が劣るのが露呈しており、馬券的には嫌って妙味ある種牡馬となりそうです。
馬券的に面白いのはタートルボウルです。
芝ではスピード不足で通用しにくいですが、ダートで穴をあけます。とくに砂を被らない外枠で成績がよく、距離は1400m以上が狙い目。
自分より強い相手に頑張る意欲はなく、昇級戦は買えません。流れが厳しくなる短縮も苦手で、Mの法則ではL系としての特徴がよく出ています。
トップクラスではあまり出番がない系統ですが、下級条件やダートで穴をあけるケースもしばしばあるので注目しておきたい1頭です。
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