血統を系統別に紹介するコーナー。
今回は、大系統ナスルーラ系と、そこから派生する小系統について詳しく紹介します。
ナスルーラ系(大系統)
ナスルーラは1950年代に英国と米国で種牡馬として活躍。
その子孫たちも次々と名種牡馬となり、1970年代までは世界で最も勢力のある血統とされていました。
ノーザンダンサー系の登場と隆盛によって徐々に影は薄くなりましたが、現在でも多くの種牡馬・母系に影響を与えています。
系統の多様性から、欧州型・米国型の分類が一般的です。
小系統とその特徴
プリンスリーギフト系
日本で最も成功したナスルーラ系の一派で、サクラバクシンオーを筆頭に、芝スプリントを得意とする系統。現在はビッグアーサーやグランプリボスが代表的な種牡馬です。
ビッグアーサーは母父キングマンボの影響で、サクラバクシンオーよりも単純なスピード能力は下がり、代わりにタフな状況に強くなります。
やや仕上がりが遅くなるのも特徴で、新馬より経験を積んで素質を開花させていくタイプですね。
エーピーインディ系
エーピーインディは父に米国三冠馬シアトルスルー、母父も米国三冠馬セクレタリアトの超良血馬。
自身もベルモントステークスやブリーダーズカップ・クラシックを制しています。
種牡馬となってからも優秀で、プルピット・タピットといった後継種牡馬が奮闘。
抜群のダート適性を誇り、ミスプロ系に比べて距離の融通も利きやすいタイプも多いです。
現在、日本のダート界はエーピーインディ系とフォーティナイナー系が2大勢力。
フォーティナイナー系が短距離の下級条件を主戦場としているのに対し、エーピーインディ系は重賞クラスでも多数活躍馬を輩出しています。
エーピーインディ系の種牡馬は英語表記になっていることも多く、馴染みがないため人気にならないケースもあり、ダートではとりあえず買って損はない。
シニスターミニスターやパイロにマジェスティックウォリアー、近年ではカリフォルニアクローム産駒が増加中。中距離路線ではとくに注目しておきましょう。
とくにカリフォルニアクロームはエーピーインディ系ながら、馬券的には芝で狙い目になることが多く、チェックしておきたい一頭ですね。
ボールドルーラー系
エーピーインディの先祖でもあり、米国を代表する名種牡馬がボールドルーラーです。
日本ではボールドルーラー系の種牡馬は少なく、父系としてはほとんど活躍していません。
米国はスピードの持続力を競うため、ボールドルーラーの血を持つ馬は持続力に秀でているのが特徴。
そのため、日本でも芝の高速馬場で持続力が問われるレースでは、ボールドルーラーの血を持つ馬が度々激走することがあります。
サンデー系ではアグネスタキオンやマツリダゴッホなどがボールドルーラーの血を持ち、直系でなくとも強い影響力を与える偉大な種牡馬です。
グレイソヴリン系
グレイソヴリンは芦毛の馬で、現在の芦毛の祖を築いたとも言われています。
自身は1950年代に英国で走ったものの、競走成績は平凡なものでした。
しかし、半兄にダービー馬がいたため、当初は血統が評価されて種牡馬入り。
兄ほどの期待はされないのは当然でしたが、種牡馬としては兄を上回る成績を収めます。
日本では80~90年代にタマモクロスやビワハヤヒデなどの名馬が活躍。
その後、凱旋門賞馬のトニービンが日本で種牡馬として活躍し、代表格となります。
グレイソヴリン系の特徴は、豊富なスタミナと大舞台に強い底力。
とくにトニービンの血を持つ馬は、重賞級のレースで大活躍をしています。
サンデー系ではハーツクライ、キングマンボ系ではルーラーシップにドゥラメンテがトニービンの血を持っています。
レッドゴッド系
レッドゴッドは1950年代に米国で生まれますが、2歳時には英国で走り、その後再び米国へ戻り競走生活を送ります。
競走成績は今ひとつでしたが、種牡馬としてはブラッシンググルームやイエローゴッドを輩出。
とくにブラッシンググルームが種牡馬として大成功を収め、凱旋門賞馬のレインボウクエスト、母父としても神の馬と呼ばれたラムタラを輩出。
日本でもテイエムオペラオーやマヤノトップガンなどの母父として、大レースで底力を与える存在となりました。
レッドゴッド系の特徴は、主にスタミナが豊富でスピードが足りないこと。
1990年代に当時の現役最強馬とまで呼ばれたサクラローレルでも、種牡馬としては活躍することはありませんでした。
最近ではバゴ産駒のクロノジェネシスが、その血統からは信じられないほどの末脚を繰り出し、クラシックでも活躍していました。
ただ、究極の瞬発力勝負ではアーモンドアイには及ばず、タフな有馬記念では逆に圧勝したことがこの血統の本質であるといえるでしょう。
ネヴァーベンド系
ネヴァーベンドは1960年代に米国で走った、ナスルーラのラストクロップ(最後の世代)です。
競走成績も一流でしたが、それ以上に種牡馬として成功。
欧州三冠を制した代表産駒ミルリーフは、20世紀の名馬トップ10に数えられるほどの名馬です。
ミルリーフからはマグニテュードを経て、坂路の申し子ミホノブルボンが日本で活躍。
しかし、異端血統でもあるため、ミホノブルボンも種牡馬としては活躍できませんでした。
欧州型の多いネヴァーベンド系の特徴も、スタミナ寄りでスピード不足といったところで、父としては通用しづらく、馬券的に狙い目を探すのは難しいですね
まとめ
ナスルーラ系は、現在こそ主流ではないものの、母系やダート戦線で高い存在感を放ち続けています。
特にエーピーインディ系の発展は目覚ましく、ダート中心の馬券戦略を立てるうえで欠かせない系統。
プリンスリーギフト系のように一時代を築いた血統も、形を変えて母系での影響力を残していることが多く、系統全体の把握が予想の精度を上げることにつながります。
ナスルーラの名は薄れても、その血はしっかりと競馬界に生き続けています。
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