iDeCo(個人型確定拠出年金)は、運用益が非課税であることから資産形成に非常に有利な制度です。
しかし、受け取り時には課税対象となるため、「どう受け取るか」で支払う税金が大きく変わる可能性が。
この記事では、年金形式と一時金による税制の違い、控除の活用方法、退職金との兼ね合いまで、初めての人でもわかりやすく丁寧に解説します。
iDeCoの受給方法と給付金の種類
iDeCoで60歳以降に受け取る「老齢給付金」には以下3つの受給方法があります。
- 年金形式(定期的に分割して受け取る)
- 一時金形式(一括で受け取る)
- 併用形式(金融機関によって選択可能)
※70歳までに手続きしないと自動的に一時金で支払われます(将来的に75歳になる可能性あり)
年金形式で受け取る場合の税金|雑所得として課税
雑所得として「公的年金等控除」が適用
iDeCoを年金形式で受給すると「雑所得」として扱われ、他の所得と合算して課税(総合課税)されます。
控除額は「公的年金等控除」により決まります。
- 年間60万円まで:税金ゼロ
- 年間100万円:基礎控除と併用で税金ゼロ
- 年間200万円:所得税+住民税で約11万円超
他の収入(給与・公的年金)がある場合、合算で税額が増えるので要注意!
一時金で受け取る場合の税金|退職所得として課税
「退職所得控除」で大幅に節税可能
一括で受け取る場合、所得は「退職所得」となり、**他の所得と分離して課税(分離課税)**されます。
加入年数に応じた「退職所得控除」が適用され、以下のように大きく節税が可能です。
- 加入20年までは年40万円
- 20年超は年70万円
- 例:30年加入=1,500万円の控除
また、数ヶ月の端数は切り上げて計算されるので、1年と1日でも経過していれば、加入年数は2年として計算されます。
会社勤めで退職金がある場合、加入期間はiDeCoの期間or勤務年数の長いほうが適用されるようになっています。
一時金での税金の計算
一時金では、課税所得に所得税率をかけ、控除額を差し引いた金額を所得税に。住民税は課税所得の約10%になります。
★ 課税所得=(収入-退職所得控除)×1/2

途中の計算式は省きますが、一時金と加入期間によるおおよその課税額は以下。
- 一時金1,000万円/加入20年 → 税額15万円
- 一時金2,500万円/加入35年 → 税額約55万円
受け取る金額からすると、支払う税金はかなり少なく済むのがわかりますね。
とはいえ、もともとは自分で掛けたお金やのに…と思う気持ちは拭えませんが。
【重要】退職金との受給タイミングに注意!
退職金とiDeCoを同じ年に受け取ると、退職所得控除は合算扱いとなり、控除枠が不利になります。
ここの扱いが非常にややこしく、最善策を素人が考えるのは不可能に思われます。一応、簡単に説明しておくと
- 先に退職金を受け取る → 20年は経過しないと退職所得控除が全額適用されない
- 先にiDeCoを受け取る → 5年を経過すれば退職所得控除が全額適用できる
このように、先に退職金を受け取ると、iDeCoに使える退職所得控除が少なくなる可能性が高いので注意しておきましょう。
どちらも受け取る金額がそれほど多くならない場合、あまり気にしなくてもいいかもしれませんが、専門家に相談するのが無難かなと思います。
受給回数と手数料にも注意
- iDeCoの受給には1回あたり440円の振込手数料が発生
- 年金形式で受給回数が多いと、手数料がかさむことも
まとめ|iDeCoの受給は「一時金」が有利なケースが多い
- 受給時には税金がかかるが、控除を活用すれば大幅に節税可能
- 加入年数が長い人ほど「一時金での受給」が有利になりやすい
- 退職金がある場合は、受給時期の調整が節税のカギ
- 金額や状況によって異なるので、不安な方は専門家に相談を!
自分で掛けたお金を受け取るのに税金がかかるのは釈然としませんが、決まっているものは仕方ない。
せめて少しでも損をしないようにしたいところですが、自分で考えるのは至難の業でもあるので、その時が来たら専門家に相談するのがいいでしょう。
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