競馬では様々な条件でレースが行われますが、それぞれの適性を見抜くには「血統」が大きな手助けとなるため、予想の効果的なファクターとなります。
血統によって得意な条件・苦手な条件が影響されやすく、種牡馬ごとに特徴を掴めば穴馬を仕留められる確率も上げられる…かもしれません。
なお、僕の血統知識は「亀谷敬正さん」の影響をモロに受けているので、ここで紹介することは完全なる受け売りとなります。
堪忍やで。
三大始祖
現在のサラブレッドは、遡ると「ダーレーアラビアン」・「ゴドルフィンアラビアン」・「バイアリーターク」という3頭の馬に辿り着き、その3頭を三大始祖と呼びます。
なかでも、99%以上を占めるとも言われるのがダーレーアラビアンの血筋。
ファラリスを経由した「ナスルーラ・ネイティヴダンサー・ターントゥ・ノーザンダンサー」の4頭が大きな影響力を持ち、繁栄してきました。
ファラリスを経由しないダーレーアラビアンの子孫や、ゴドルフィンアラビアン・バイアリータークの血を引く馬はごくわずかで、マイナー血統として扱われています。
近年はネイティヴダンサーからミスタープロスペクター、ターントゥからヘイルトゥリーズン、ヘイルトゥリーズンからヘイローやロベルトといった馬へ派生。
日本が誇る名血・サンデーサイレンスはヘイローから派生した一大系統となっています。
大系統分類
血統を競馬予想に活かすには、血統ごとの特徴を把握する必要があります。現在、父として大きな影響を与えているのは以下の5系統。
- サンデーサイレンス系
- ヘイルトゥリーズン系
- ミスタープロスペクター系
- ノーザンダンサー系
- ナスルーラ系
この5頭に加え、母系に入って影響力を与えている5系統を加えた10系統を「大系統」に分類。大系統をさらに細かく分類したものを「小系統」としています。
ここから各大系統について解説していきますが、僕は血統ビーム理論の提唱者である亀谷敬正さんの書籍で血統を勉強したので、基本的にはその考えが軸となります。
しかし、血統を分析されている方は数多く、それぞれ捉え方が違うこともあり、ここではひとつの考え方として見ていただきたいと思います。
堪忍やで。
大系統分類
このブログでは、大系統を以下の10系統に分類しています。
- サンデーサイレンス系
- ヘイルトゥリーズン系
- ミスタープロスペクター系
- ノーザンダンサー系
- ナスルーラ系
- ハンプトン系
- セントサイモン系
- マイナー系
- ヘロド系
- マッチェム系
現在、世界的に父系として活躍しているのは1~5の系統で、日本ではサンデーサイレンス系が圧倒的な強さを見せています。
米国ではミスタープロスペクター系やナスルーラ系、欧州ではノーザンダンサー系が活躍。国が違えば繁栄している系統も違うのが、血統の面白さですね。
それでは、各系統について紹介していきます。
サンデーサイレンス系
サンデー(サイレンス)系は現在の日本競馬で主流となる系統。その特徴は瞬発力に秀でた馬が多いことです。
現在は芝の長距離よりも2000m前後の中距離で行われるレースの価値が高く、道中はゆったりと追走し、最後の直線でどれだけスピードを発揮できるかが問われます。
そういった流れに滅法強いのがサンデー系であり、大レースでは出走馬の大半がサンデーの血を持つ馬で占めることも多々ありますね。
しかし、瞬発力に秀でている反面、ダートや短距離には適性が低いことが弱点。
90年代中盤から日本でサンデーサイレンス産駒が走るようになりましたが、その影響力は凄まじく、今ではサンデーの血を引く種牡馬が非常に多いです。
タイプによっては短距離やダートで活躍しやすい産駒を出す馬もおり、一括りにサンデー系とするには無理が出てきました。
そこで、サンデー系でも似た特徴を持つタイプを5つの小系統に分類し、予想に活かすようにしていきます。
ヘイルトゥリーズン系
ターントゥ産駒のヘイルトゥリーズンは、ヘイローとロベルトを輩出。日本でも多くの活躍馬がいます。
サンデーサイレンスはヘイロー産駒なので、大きく括ればヘイルトゥリーズン系と言えますね。
サンデーを経由しないヘイロー系は、瞬発力よりもスピードやパワーに優れます。そのため、活躍の場は主に短距離やダート。
ロベルト系はスタミナやパワーに優れ、休み明けよりも叩いて良化するタイプが多い特徴があります。
どちらもパワーがあるので芝・ダートともに走れることが多いです。
ミスタープロスペクター系
ミスタープロスペクター系は、一般的にミスプロ系と省略されて呼ばれます。
父レイズアネイティヴのミスタープロスペクターは、米国の主流血統として多くの活躍馬を輩出。その活躍は米国だけにとどまらず、欧州にも届きます。
米国はダートが主戦場ですが、欧州で走るタイプは芝適性が高くなります。前者を米国型・後者を欧州型とわけて考えることで、馬券に活かすことも。
米国型は完成度が高い(仕上がりが早い)ので2歳戦から活躍し、ダート向きの産駒が多いのが特徴ですね。
一方、欧州型は芝向きが多く、母系次第でダート向きになることも。サンデー系に比べるとスピード不足で、一部を除いては大舞台での活躍は難しくなっています。
芝の大舞台でも活躍できる一部が、キングマンボの血を持つキングカメハメハ。そのキングカメハメハを父に持つロードカナロア・ルーラーシップも、大舞台で活躍します。
ロードカナロアは初年度から牝馬三冠を制したアーモンドアイを輩出。現在の日本ではサンデー系とミスプロ系(キングマンボ)のどちらかの血を持つことが、非常に重要な要素となっています。
さらに急逝が惜しまれるのがドゥラメンテ。数少ない産駒から数々の活躍馬が輩出され、今後の競馬界を変える可能性すらあっただけに残念です。
ノーザンダンサー系
ノーザンダンサー系は世界中で活躍馬を出す大系統。
ミスプロ系と同じく欧州型と米国型にわけて考えることができます。
欧州型はタフな馬場をこなすスタミナを持ちますが、日本の主流馬場だとスピード不足。しかし、短距離戦ではサンデー系以上に活躍することもあります。
米国型はダート向きのパワーを備え、2歳戦から短距離でガンガン走る産駒が多いですね。このあたりはミスプロ系の米国型と似た傾向です。
馬券的にはダート戦で期待値が高く、芝でも主流血統が走れない馬場になると穴を連発します。
ナスルーラ系
ナスルーラ系は、ノーザンダンサーが台頭する以前に世界を席巻していた大系統。
ナスルーラ自身は激しい気性とスピードを武器にしていましたが、母系からスタミナを補って欧州でも活躍する馬を多く輩出し、世界中で繁栄しました。
ナスルーラ系もダート向きの米国型、スタミナ豊富な欧州型、日本の短距離で活躍する日本型と様々なタイプの種牡馬がいます。
日本では70年代から90年代中盤まで活躍していましたが、サンデーサイレンスの登場により勢力図が大きく塗り替えられ、現在は大舞台で活躍する馬はほとんどいません。
欧州でもナスルーラ系に代わってノーザンダンサー系が主役の座を奪い、時代とともに淘汰される宿命を感じさせますね。
米国では今でもミスプロ系、ノーザンダンサー系に劣らない活躍ぶりを見せていますし、日本でも米国型の産駒はダートで強さを発揮しています。
その他の大系統
ここまでの5系統は、いずれもダーレーアラビアンの血を引くエクリプス→ファラリスと経由した系統で、現在ではほとんどの馬がこれらの血を引いています。
エクリプスからはファラリス以外にも発展を遂げた父系があり、ハンプトン系・セントサイモン系・それ以外のマイナー系に分類されます。
また、三大始祖のうちバイアリータークからヘロド系が、ゴドルフィンアラビアンからマッチェム系が現在でも存続しています。
ハンプトン系
現在、ハンプトン系は父系としては残っていませんが、母系に入ってスタミナを伝えています。
日本ではディクタスからサッカーボーイという快速馬が出ましたが、サッカーボーイは種牡馬になると本来の特徴であるスタミナ豊富な産駒を輩出。
ツボに嵌まると大駆けしますが、人気でもアテにできない特徴があります。
サッカーボーイの全妹ゴールデンサッシュとサンデーサイレンスの間に生まれたのがステイゴールドで、ステイゴールド産駒は大一番での強さと人気での脆さが特徴的。
元を辿ればこの系統の特徴ということですね。
セントサイモン系
セントサイモン自身は1000m~4000mで10戦10勝という成績を残し、英国競馬の至宝と呼ばれた名馬です。
種牡馬としても1890年から通算で9回、英国リーディングサイアーとなった歴史的大種牡馬であり、現在のサラブレッドのほとんどはセントサイモンの血を持つと言われています。
その特徴は豊富なスタミナと底力で、大舞台で強さを発揮するようになること。とくに、血統表にリボーという種牡馬がいる場合、何か期待せずにはいられない
…そんな気にさせてくれる一族です。(気がするだけかも)
セントサイモンがリーディングサイアーの座を譲ったのが自身の産駒であり、以降は産駒が種牡馬として次々と活躍し、セントサイモン系が急激に発展していきます。
しかし、あまりにも反映しすぎた結果、血の飽和が起こって急速に衰退するようになりました。
現在の日本ではサンデーサイレンス系が急激に発展していますが、今後はセントサイモン系と同じように、血の飽和によって衰退していく可能性は高いでしょう。
マイナー系
エクリプス系には他にも各時代で活躍した父系が存在しますが、数が少なすぎるため残りはマイナー系として一括りにしています。
各小系統ごとにダート型、スタミナ型などの特徴はありますが、活躍する場面はかなり限定されるため、最初に覚える1頭には向いていませんね。
ヘロド系
三大始祖のうち、バイアリータークから派生して残っている系統です。
日本では90年代前半に、メジロマックイーンやトウカイテイオーといった名馬も輩出。一時代を築いたと言えるでしょう。
しかし、馬場の高速化が進むにつれて適性が合わなくなり、すでに父系としては残っていません。
三冠馬オルフェーブルやゴールドシップの母父はともにメジロマックイーンで、母系に入って一定の存在感を示しています。
マッチェム系
三大始祖のうち、ゴドルフィンアラビアンから派生した系統です。
マッチェム系は三大始祖の中で最初に繁栄した系統で、今でも高いスピード能力と持続力を発揮しています。
新潟1000mの適性が高く、父か母父にマッチェム系の血を持つ馬がいたら黙って買っておくと良いことがあるかも。(あるとは言っていない)
新潟1000mでマッチェム系のカルストンライトオが記録したレコードは、未だに破られていません。当時(2002年)と現在の馬場状態を考えると、これは驚異的なことです。
まさに「歴代最速馬」と呼んでも過言ではない馬が、主流ではなくマイナーな系統から出現したのは偶然なのか?
血統って面白いですね。
血統の大系統分類まとめ
国が違えば強い馬が違うのは、血統にはそれぞれ適性というものがあり、それぞれの国に合った適性を持つ系統が繁栄するからです。
あのディープインパクトですら、欧州競馬ではスタミナが足りずに勝てませんでした。しかし、同じメンバーで日本で走ればまず負けることはないでしょう。
決して能力が足りずに負けたのではなく、適性の差で負けたということです。
血統を知れば適性の高い得意条件を狙うほか、苦手条件に出走している人気馬を消すことにも利用できます。
芝で連勝したディープインパクト産駒が、ダートに出走して1番人気になれば喜んで消しましょう。
まぁそんなケースはほとんどありませんけどね。
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